研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[タイにおける白血病のリスク要因] epidem.

Risk factors for leukemia in Thailand

掲載誌: Ann Hematol 2009; 88 (11): 1079-1088

成人発症白血病症例対照研究がタイ、バンコクで行われ、疾病の原因としての携帯電話使用と他の要因が調査された。180症例(87の急性骨髄芽球性白血病、40の急性リンパ芽球性白血病、44の慢性骨髄性白血病、8の慢性リンパ性白血病、1つの未分類急性白血病)が、756の年齢、性別を対応させた病院の対照群と比較された。データは聞き取りによって得られた。オッズ比(ORs)は無条件ロジスティック回帰によって求められた。携帯電話使用との明確な関係性は確認されなかったが、使用期間は比較的短く(平均24-26カ月)、いくつかの使用状態(ORs、1.8-3.0、>1.0の低い信頼区間)と、GSMサービスを使用する場合(ORs=2.1、95%信頼区間=1.1-4.0)でリスクが上昇する可能性がみられた。骨髄白血病(急性と慢性の合計)は、ベンゼン(OR=3.9;95%信頼区間=1.3-11) 、他の一般的な溶剤(OR=2.3;95%信頼区間=1.1-4.9)、詳細不明の職業上使用する殺虫剤(OR=3.8;95%信頼区間=2.1-7.1)、送電線やその周辺での作業(OR=4.3;95%信頼区間=1.3-15)との関係性が見られた。診断用X線、喫煙、他の職業ばく露では関係性が確認されなかった。

研究の目的(著者による)

白血病の病因に対する携帯電話使用及びその他の要因の寄与を調査するため、タイにおいて症例対照研究を実施した。

詳細情報

以下の3つの要因のうちの少なくとも1つが当てはまる携帯電話ユーザーは高リスクとされた:≥ 75 % の時間が発信、≥ 75 % の時間がアンテナを延長、または金属製の眼鏡を少なくとも数回着用。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ: (オッズ比(OR))

ばく露

ばく露評価

ばく露集団

グループ 説明
参照集団 1 携帯電話使用なし
集団 2 携帯電話使用
集団 3 携帯電話使用:低リスク
集団 4 携帯電話使用:高リスク
集団 5 サービス事業者:GSM
集団 6 サービス事業者:その他
集団 7 GSMのみ使用
集団 8 GSMのみ使用:低リスク
集団 9 GSMのみ使用:高リスク
集団 10 ヘアドライヤーの使用
集団 11 コンピュータの使用
集団 12 コードレス電話の使用
集団 13 電子レンジの使用
集団 14 その他の電気機器の使用
集団 15 電力線の近くに居住
集団 16 電力線で、または電力線の近くで作業

調査対象集団

症例集団

対照集団

調査規模

症例 対照
適格者 170 756
参加者 170 756
その他:

急性骨髄性白血病の症例87人、急性リンパ性白血病40人、慢性骨髄性白血病44人、未分類の急性白血病1人

統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

全体として、携帯電話使用と白血病との明確な関連はなかった。特定の使用を実践する人々(グループ4)及びGSMサービスを使用した人々(グループ5)について、リスクが高いかも知れないという示唆があった。家庭用電気製品の使用または電力線の近くでの居住との有意な関連はなかった。急性及び慢性骨髄白血病は、電力線での、またはその近くでの作業と有意に関連していたが、これらの結果は少ない数に基づいていた。

研究の限界(著者による)

携帯電話使用の期間は比較的短かった(中央値24-26か月)。電力線への職業ばく露の強度及び期間についてのデータは利用できなかった。

研究助成

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