研究のタイプ: 疫学研究 (observational study)

[思春期層における携帯電話の使用と認知機能の変化] epidem.

Use of mobile phones and changes in cognitive function in adolescents

掲載誌: Occup Environ Med 2010; 67 (12): 861-866

この研究は、第7学年生徒の認知機能に対する携帯電話ばく露の影響を調査した。分析したデータは、オーストラリアの「携帯電話無線周波ばく露した利用者調査(MoRPhEUS)」から提供を受けた。MoRPhEUSでは、第7学年生徒を対象とした2005~06年の基礎調査と1年後の追跡調査を行った。社会人口学的データおよびばく露データは質問票により収集した。認知機能は、コンピュータ化タスクおよび色文字ストループテストで評価した。基礎、追跡の両調査に236名の生徒が参加した。その結果、携帯電話所有率および通話・携帯メール(SMS)の1週間当たりの回数は基礎調査に比べ追跡調査で増加していた;基礎調査時点で通話・SMSの回数が多い生徒は、追跡調査でのコンピュータ化タスクにおける反応時間低下が小さかった;1年間で通話・SMSの回数が増加した生徒では単純反応や作業記憶タスクの反応時間が変化した;携帯電話ばく露ストループテストの間に関連は見られなかった、などを報告している。

研究の目的(著者による)

オーストラリアの思春期層における携帯電話へのばく露認知機能との間にあるかも知れない関連を調べるため、MoRPhEUS研究(オーストラリア携帯電話ばく露ユーザー研究)を実施した。ベースラインの調査結果は、Abramson他(2008)に発表している。
本研究の狙いは、1年後に認知結果への影響が生じるかどうか、及び/または、期間中のばく露の増加が認知結果の変化を伴うかどうかを調査することであった。

詳細情報

認知機能はコンピュータ化されたCogHealth精神測定検査及びStroop検査によって評価した。

影響評価項目/リスク推定のタイプ

リスク推定のタイプ:

ばく露

ばく露評価

調査対象集団

調査規模

タイプ
適格者 317
参加者 236
統計学的分析方法: (調整: )

結論(著者による)

携帯電話所有の割合、週当たりの音声通話及びSMSの回数の合計は、ベースラインからフォローアップで増加した。ベースラインでは思春期層の75%、フォローアップでは86%が携帯電話を所有していた。ベースラインでは、生徒が報告した週当たりの回数の中央値は音声通話が8回、SMSが8回で、フォローアップでは音声通話が10回、SMSが10回であった。研究期間を通じたばく露の増加は主に、ベースラインでの通話回数が少なかった生徒に認められた。

携帯電話使用と幾つかの認知結果の変化との関連が認められ、これは特に、精度の変化ではなく反応時間の変化であった。ベースラインでの音声通話及びSMSがより多かったが、フォローアップではばく露が増加していなかった参加者は、幾つかのCogHealth課題における1年間の期間を通じた反応時間の短縮が少なかった。携帯電話使用とStroop色‐単語検査との関連は認められなかった。更に、テキストメッセージの数の差は、CogHealthまたはStroop課題における変化と何ら関連していなかった。

著者らは、調査期間を通じて観察された認知機能の変化は、平均に向けた統計的回帰と関連しているかも知れず、携帯電話ばく露の影響ではないかも知れない、と結論付けた。

研究助成

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